コミュニケーション能力の育成が叫ばれて久しくなった今でも、日本語能力試験はとっくにN1を取ったのに、いまだに日本語会話はN3レベルという日本語学習者が、日本にも海外にもたくさんいることに気づきます。読んだり、書いたりできるけど話せない、文法はいっぱい知っているけど、道案内すら十分にできない学習者を作ってきた日本語教育には抜本的な改革が必要だと言えるでしょう。
何時間学習したとか、どの教科書を使ったとか、誰に習ったかとか等とは直接関係のない「実力」、つまり、日本語を使ってどんなコミュニケーション活動がどれほど遂行できるのかを表す「プロフィシェンシー」という概念を紹介し、それに親しんでいただくことが本シンポジウムの目的です。とりわけ、OPI (Oral Proficiency Interview)と称する面接による口頭能力の測定法は被験者と自然な会話を行うことにより、その人の真の実力、プロフィシェンシーを見極めるという特徴をもち、多大な関心を集めてきました。
そのような背景のもと、2002年夏には英国エジンバラにて第1回の国際日本語OPI研究会を開きました。その後、京都、函館、ソウル、ベルリン、プリンストン、台湾など世界各地にて開催され、2019年11月1日〜2日には第12回国際日本語OPIシンポジウム(第1回国際日本語プロフィシェンシー研究シンポジウム)を大連外国語大学にて開催することになりました。
今回の試みは中国大陸で初めてのものであり、まずは、日本側と中国側のメンバーからなる実行委員会を構成し、次のようなプログラム案を作成、実りある成果が得られるよう準備を進めています。
基調講演では、日本プロフィシェンシー研究学会を代表して鎌田修会長(南山大学元教授)が、「プロフィシェンシー研究の魅力とインパクト」について、また定延利之(京都大学)は「ちょっとおもしろくなる話」について、さらに中国における日本語教育関係者1名(氏名、演題近日公開)のあわせて3名がオープニングを飾ります。
次に、中国で日本語教育に関わる方々にOPIのことを知っていただくために「OPIファミリアライゼーション」を行います。実際のOPIを見ていただくことで、プロフィシェンシーとはどのようなものか理解していただけると思います。さらに、ディスカッションを通じて、授業への応用も十分に考えられるものであることがお分かりいただけるでしょう。
シンポジウムでは、このようなプロフィシェンシーそのものを研究することについて考えます。プロフィシェンシーの考え方を取り入れた教授法、評価法、授業実践、そして言語の研究、これまでとは違う、新しい日本語教育の研究の方法をみなさんと議論します。
研究発表は、プロフィシェンシーの考え方に基づくものや、中国国内において、「自然な」「生の」日本語に焦点をあてて授業や研究をされている方々の発表が出揃いました。こちらも是非お楽しみください。
2019年11月2日(土)~11月3日(日)
9:30~17:30(11月2日(土))
9:30~13:00(11月3日(日))
大連外国語大学
(大連市内から大連外国語大学までは送迎バスが運行予定です。)
主催:日本語プロフィシェンシー研究学会、大連外国語大学
後援:独立行政法人国際交流基金
協賛:ACTFL
8:30 受付(図書館講堂)
9:00 開会式
9:30 集合写真
09:50~10:15 基調講演1 高 昇(中国教育部考試中心外語考試処 処長)
10:15~10:40 基調講演2 曹 大峰(北京外国語大学 教授)
10:45~11:30 基調講演3 鎌田修(日本語プロフィシェンシー研究学会 会長) 「プロフィシエンシー研究の魅力とインパクト」
11:30~12:15 基調講演4 定延利之(京都大学文学研究科 教授)「ちょっとおもしろくなる話」
12:15~13:15 昼食
13:15~14:45 OPIファミリアライゼーション
14:45~15:00 移動
15:00~17:00 口頭発表、ポスター発表
17:00~移動
17:30~19:30 懇親会
09:00~10:10 学会企画パネルディスカッション1 帰ってきたウッしゃんフェローズ特別企画 「個を軸にした初級から上級への成長」
10:15~11:25 学会企画パネルディスカッション2 「多様化する個とプロフィシェンシー研究」
11:25~11:35 休憩
11:35~12:45 学会企画パネルディスカッション3 「中国人学習者のプロフィシェンシー教育」
12:45 全体総括(定延利之(京都大学))・閉会式(優秀発表賞)
13:10 終了
外務省の渡航情報のサイトです。各自ご一読されることをお勧めします https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcsafetymea
研究発表の内容を更新しました。 http://dalian2019.proficiency.jp/?page_id=298 http://dalian2019.proficiency.jp/?page_